医者といえば、収入も社会的地位もトップクラスの職業と誰もが思う。医者と結婚するというと、たとえ婚家に財産などなくても、玉の輿のようにいわれる。
内科医と見合い結婚したA子も最初はホクホク顔だった。医者といっても、教育ママに尻をたたかれて医者になったようなボンボンなら、性格に問題があったり、姑がウルサかったりするだろうが、A子の結婚相手は、そんな心配もない。
両親を早くに亡くしているので、同居の苦労はないし、小さいころから苦労して育った人だから、しっかりしていて、思いやりもある。
「この人と結婚したのはやはり、まちがいじゃなかったわ」
すっかり満足したA子は、
「あなたの仕事の力になりたいの」
なんて、やさしい言葉を夫にささやいた。
すると夫は、ある日突然A子にこういったのである。
「北海道の無医村にいって、僻地医療に一生を捧げようと思うんだ。君という理解者を得て決心した」
いまさら「話がちがう!」とはいえないA子は、泣く泣く、都会住まいの何不自由ない医者の妻から、僻地医療に一生を捧げる医者の妻になったのだった。

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