1908年のロンドン五輪、まだマラソンの距離が41.8キロだったころのお話。
レースは、残り3キロちょっとでピエトリ(イタリア)がトップ。ところが、スタジアムにはいってきたピエトリはフラフラ。心身ともに疲労が極限に達して、意識が檬朧としていたのだろう。なにをカンちがいしたのかコースを逆に走りはじめたかと思うと、トラックにバッタリ倒れてしまったのだ。
ピエトリは何度も立ちあがってはそのつど倒れた。その悲痛な姿に観客は総立ちになり、大声で声援をおくった。しかし、立ちあがれないピエトリ。
そうこうしているうちに2位のランナーがスタジアムにはいってきた。そのときである。みるに耐えかねた大会役員が、ピエトリを抱きかかえてゴールを踏ませてしまったのだ。
「疑惑の金メダリスト」となったピエトリだったが、案の定トラブルがもちあがってしまった。2着にはいったヘイズの国アメリカが、介助を受けたピエトリは失格だと抗議してきたのだ。この抗議が認められて、ピエトリの優勝はあえなく無効になった。
ところがどっこい、金メダルこそのがしたが、この一件でピエトリは国際的な有名人になり、多額の報酬を得てひと財産を築いたという。
くやしい逆転負けが、思わぬ幸運をうんだというわけだ。この場合、はたして負けてよかったのか……?

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