人生には、ときとして小説よりもドラマチックなことが起きるものである。M子さん(32歳)は、最近つくづくその感慨にふけっている。
K部長は入社当時のM子さんの上司。とにかくキレ者で仕事ができる。この部長がM子に仕事のおもしろさを教えてくれた。ところがこのK部長、あまりにキレすぎるあまり、愚鈍と評判の新社長を、ある会議の席上で論破してしまった。
これがつまずきとなり、彼は左遷。冷遇されるのにイヤ気がさしてついに辞表をたたきつけた。
「いまごろは、趣味の油絵でも書いて、お家でのんびりしていらっしゃるのかしら……」M子は当時をなつかしんでいた。
そんなときのこと。M子の会社と長年つきあってきた取引先が、突然、すべての取引を中止するという通達をしてきた。会社は上を下への大騒ぎである。
よく調べてみると、あのときのK部長がその取引先の取締役に就任したというのだ。それも仕入れ部長として一切の権限を掌握していたというから、この仕打ちはかつての復讐にちがいない。なんともすごい執念ではないか。
M子さんは会社の一大事だというのに、心のなかでK部長に力強いエールをおくってしまったのだった。

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