戦前の大横綱、双葉山は、69連勝という大相撲連勝記録をいまなお保持しているが、その70連勝目を阻止したのが平幕の安芸ノ海だった。
双葉山の連勝は昭和21年春場所からはじまり、12年と13年とつづけて1敗もしなかった。当時は、双葉山がいつ誰に負けるのかということに話題が集中、大相撲人気は頂点に達していた。
昭和14年1月15日、初場所4日目。日曜日とあって東京両国の国技館には2万人を超す大観衆がつめかけた。双葉山の70連勝目の相手となるはずだった対戦力士は出羽海部屋の新鋭、安芸ノ海。
両者立ち会い後、安芸ノ海は腰を低くして盤石の構えで双葉山にくらいつく。安芸ノ海の外掛けに双葉がグラつく。そこで強引に双葉が下手投げをうつが、こらえた安芸ノ海の引きつけが鋭く、双葉の左ひざが土俵に落ちた。
70連勝は阻止されたのである。館内は悲鳴ともさけび声ともつかないどよめきでいっぱい。
まさかの「大番狂わせ」の立役者となった安芸ノ海は双葉山に初挑戦で、彼こそ、出羽海部屋が打倒双葉山のために用意した秘密兵器だったのだ。
出羽海部屋では、双葉山に取り口の似た力士を彼に見立てて弱点を研究、ひそかに猛稽古を重ねていたのである。

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