1792年、ベルギー(当時はオーストリアの一地方)でひとりの女性が、夫、両親、ふたりの姉妹を殺害するという残虐な事件が起きた。
その凶悪な事件の犯人はアンリエット・オルレイル夫人(25歳)。ふつうなら、まちがいなく死刑をいい渡されるほどの重罪である。
ところが、結果は5人の裁判官の意見が一致して、「無罪」。
すべては、オルレイル夫人の「美しさ」に惑わされたための判決だった。
じつは長時間を要した裁判官の評議も、
「無罪となった彼女と結婚するのは、誰にするか」
というあきれたものだったらしい。
議論の末、投票で裁判長のヴェルノア氏に「交渉権」があたえられ、けっきょく、オルレイル夫人は彼の妻におさまった。
罪をまぬがれて、しかも判事の妻という最高の「大樹」を手に入れたわけである。
だが、彼女が結婚したのを、逃亡中の共犯のラセラック男爵が知り、犯行のあらましをしゃべってしまった。
これによって、ラセラック男爵とともにオルレイル夫人は「高齢の裁判官たち」のもとでふたたび裁判にかけられ、死刑をいい渡された。今度ばかりは、美貌も、判事の夫も、無力であった……。

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