某大手ファッションメーカーに勤務するAさんは、長男に2歳から水泳、4歳からスキーをやらせているくせに、本人は極度の虚弱体質でスポーツは大の苦手。
ところが、会社はいわゆる「体育会系企業」で、最近赴任してきた上司も元ラグビー選手。K大出のインテリで虚弱体質のAさんのようなタイプをもっとも嫌い、ふだんからなにかにつけて目の敵(かたき)にする。
Aさんの胸の内は、「人生をまちがえた……」という後悔の念でいっぱいだった。
そんなあるとき、できれば避けて通りたい「運動会」がやってきた。事業部単位で得点を競うのだが、その結果が管理職にとっては査定に響く。スポーツのできない社員はこの日一日、針のムシロに座らされているようなものである。
家族対抗リレーで、あろうことかAさんの子供(六歳)とAさんの上司の子供が、いっしょに走ることになった。
走るのは子供でも、親のメンツもかかっている。とくにAさんにとっては、日頃のうっぷんを晴らすチャンスだった。
レースは、上司の子供が先行したが、Aさんの子供も粘りに粘り、最後に逆転してゴールイン。「よくぞやってくれた」。知らずに親の名誉回復に貢献した子供の頑張りに、Aさんは不覚にも涙をこぼしたのだった。しかし、その後Aさんは、会社での上司の冷たい視線に針のムシロに座らされているようだという。

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