「パーティー用のラム酒を用意した」。これが作戦開始の暗号だった。
この連絡が入ると、ハイジャック犯たちは搭乗手続きをするために空港に集まった。いよいよ1年かけて練られたハイジャック計画が実行に移されるのだ。
こうして機長が飛行機を乗っ取るという前代未聞のハイジャック事件が起こった。なんとクルーと全乗客53人のうち、犯人が48人。
こうなると乗っ取りというのかどうかよくわからないが、ハバナ発のキューバ航空の国内便は離陸10分後に無事(?)ハイジャックされた。目的はキューバからアメリカに亡命しようというもの。
48人の犯人は、カルロス・カンシア機長と2人の機関士、それにその家族や親戚、友人たち。いわば身内同士のハイジャックだ。
危なかったのは、搭乗のときである。同じ名字の者が多すぎて怪しまれたのだ。(こればかりは綿密な作戦を練っても、ごまかしようがないのだから、しかたない……)が、それは機関士が助け舟を出して切りぬけた。
あとはキューバの管制塔に疑われないこと。国内便がおかしなところを飛んでいたら、へ夕をすればミグに撃ち落とされるかもしれない。
そこで、機長は名案を思いついた。この機がハイジャックされたことにすればいいと(気づくのがいささか遅いが)。管制塔はまんまとだまされた。
1992年12月28日、どこかおかしなハイジャック機は、こうしてマイアミ空港に緊急着陸することができたのだった。
ちなみに、キューバの独裁政権を倒そうという気骨のある男たちは、こんなふうにみんな亡命しちゃうのだそうだ。

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