機転とユーモアのおかげで、なんと死刑をまぬがれた男がいる。いまから400年ほど前、16世紀のイギリスでは、羊泥棒といえば重罪だった。
アーチー・アームストロングという男が、この罪で死刑に処せられることにきまったが、それでもなんとか命をながらえる道はないものかと必死に考えていた。
そこへ飛びこんできたのが、国王・ジェームス6世が英訳聖書を完成させたというニュース。そのニュースを聞いて一計を案じたアームストロングは、「この世の名残にぜひとも聖書を読んで死にたいので、国王に頼んでみてはくれまいか」と牢番にもちかけた。
幸いその願いは国王の耳に届き、聖書が差し入れられたばかりでなく、国王はアームストロングが聖書を読み終わるまで死刑執行を中止するようにとりはからった。
さて、ここからがアームストロングの知恵のみせどころ。
「オレは聖書をじっくり味わいながら読む。一日一行ぐらいのわりでね……」
これを聞いた国王、にやりと笑っていった。
「頭もよさそうだし、ユーモアのセンスもあるヤツだ。しかし無制限に読ませるわけにもいかないから、期限は300年としよう」
こうして、アームストロングは命拾いをしたばかりでなく、なんと国王のはからいで宮廷員として悠々たる一生をおくったという。
死刑をまぬがれて逆転。宮廷員として迎えられてまた逆転というオマケつきのお話である。

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