戦前の大阪落語全盛時代に活躍した桂春団治は、若いころ、かつお節問屋の娘婿になりかけたことがある。
丁稚奉公を転々としていた春団治は、どこで働いても長つづきしなかったが、十数軒目につとめたかつお節問屋でだけは、たいへん気にいられた。
そんなある日、彼は、自分のことを主人夫婦が話題にしているのを、耳にした。
「あいつをゆくゆくうちの娘婿にしたらどないやろ?」
「ええんやないですか」
貧しい丁稚にとって、これはたいへんな出世だ。すっかりその気になった彼は、気の早いことを考えた。
「どうせ嫁さんにもらうんなら、一刻でも早いほうがええなあ」
その晩、よせばいいものを娘のところに忍びこもうとしてみつかり、この勇み足が原因で、たちまち彼の運命は急転。
婿養子どころか、店をクビになってしまったのだった。

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